患者にはどのような権利が認められているのでしょうか。患者に認められる権利を理解することは、患者として自立的な一歩を歩むうえでとても大切なことです。
それぞれの権利に歴史があるように、患者の権利が認められるまでには様々な歴史や背景がありました。そして、患者の権利を守る法律もあります。

 このコーナーでは、患者の権利と権利法、患者の権利の歴史、医療法とその改正、受診に際しての知る権利についてそれぞれ解説します。

 患者の権利と権利法患者の権利の歴史医療法とその改正受診に際しての知る権利
 
 患者の権利
 患者が医療を受ける場合、時として専門的な治療を施す医師との関係で従属的な立場におかれたり、お任せ医療に陥ったりして、人間性が十分に尊重されないことがあります。
 個別的な医療関係において患者自身の主体性を強調するという観点から、患者の人格が尊重されるとともに、患者が自らの意思と選択のもとに最善の医療を受けることができるという、患者としての権利を、特に
「患者の権利」と言っています。
 患者の権利の重要性、根拠については、「患者の権利法をつくる会」の「患者の諸権利を定める法律要綱案」の前文で、次のように述べています。
 「すべての人は自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持し、到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有している。(世界人権宣言、国際人権規約)
 日本国憲法は『生命、自由および幸福追求に対する国民の権利について最大の尊重を表明するとともに、すべての国民が健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有することを確認し、国が、すべての生活部面において社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めるべき義務』を有することを宣明した。医療は、人々の健康に生きる権利の実現に奉仕するものであり、何よりも人間の尊厳を旨とし、科学性、安全性をそなえるとともに、患者の主体性を尊重し、できる限り開かれたものでなければならない。」
 患者の権利の具体的内容については、次のような国際的な宣言でも述べられています。
    *ヨーロッパにおける患者の権利促進に関する宣言(1994年3月)
       <WHO(世界保健機構)患者の権利に関するヨーロッパ会議>
1 人間として尊重される権利 
2 自己決定の権利
3 身体及び精神の不可侵性の権利及び身体の安全を保障される権利
4 プライバシーを尊重される権利
5 道徳的及び文化的価値観、並びに宗教的及び思想的信条を尊重される権利
6 疾病の予防及び保健医療に対する適切な措置によって健康を保持される権利、及び、
 達成可能な最高水準の健康を追求する機会を持つ権利
*患者の権利に関する<改訂>リスボン宣言(1995年9月)
1 良質の医療行為を受ける権利
2 選択の自由の権利
3 自己決定の権利
4 情報に対する権利
5 秘密保持の権利
6 保健教育を受ける権利
7 尊厳の権利
8 宗教的な援助を受ける権利
*前記の「患者の諸権利を定める法律要綱案」にも患者の権利の内容が具体的に定められ
 ています。
([患者の権利法]をご参照ください。)
 当会は、患者が自ら主体として行動することによってこれらの権利を保持し医療従事者もこれらの権利の実現に努めることが重要であり、そうすることがより良い医療の実現につながると考えています。
     
   
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    患者の権利法
 患者の権利法とは、患者の権利の法制化を求めて活動している市民団体
「患者の権利法をつくる会」が、患者の権利を保障するため法制化を訴え
ている法律案です(正式名称:「患者の諸権利を定める法律要綱案」)。
1991年10月14日に発表されました。
 同要綱案では、患者の権利を大きく医療における基本権と患者の権利各則
に分けて、具体的な権利の内容を列挙しています。
*医療における基本権
1) 医療に対する参加権
2) 知る権利と学習権
3) 最善の医療を受ける権利
4) 安全な医療を受ける権利
5) 平等な医療を受ける権利
6) 医療における自己決定権
7) 病気及び障害による差別を受けない権利
*患者の権利各則
1) 自己決定権
2) 説明および報告を受ける権利
3) インフォームド・コンセントの方式、手続き
4) 医療機関を選択する権利と転医・入退院を強制されない権利
5) セカンド・オピニオンを得る権利
6) 医療記録の閲覧謄写請求権
7) 証明書等の交付請求権
8) 個人情報を保護される権利
9) 快適な施設環境と在宅医療および私生活を保障される権利

10) 不当な拘束や虐待を受けない権利
11) 試験研究や特殊な医療における権利
12) 医療被害の救済を受ける権利
13) 苦情調査申立権


 
 
  
「患者の権利の歴史」に関する文献を10回分毎にまとめて掲載しました。(PDF)
 
     第1回〜第10回| |第11回〜第20回| |第21回〜第30回| |第31回〜第39回
   
  
  
  

医療法とその改正

1 医療法

    医療法は、医療提供体制等に関する基本法規で、昭和23年に制定され、多数の改正を経て
 今日に至っています。この法律は第1条で、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な
 医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与することを目的と
 する、としています。


 主な内容は、20床以上は病院で、19床以下や病床のないものは診療所と定義し、さらに病院・病
床の分類を定め、施行規則でそれぞれ構造設備や標準人員などを細かく規定しました。また各
都道府県に医療計画策定を義務づけ、病院病床数を規制することや、医療法人、広告のあり方
なども定めています。

 患者の権利との関係では、医療提供の理念として「医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を
旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に
基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみ
ならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければ
ならない。」(第1条の2)と定めています。

 さらに「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、
適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」(第1条の4第2項)と
インフォームド・コンセントの必要性を努力義務として謳っています。

2 医療法改正
  
    医療法の近年の主要な改正は、いわゆる第1次改正から第8次改正まであります。

◇第1次改正(昭和60年)
  病院病床数が増え、医療費が増大するのを抑制するために、全国を2次医療圏(都道府県内を
 数地域から十数地域に分け、一般的な病気はその地域内で診療が完結するように考えられた圏域)
 と3次医療圏(原則として都道府県単位)に分けてそれぞれ病床数の上限を規制しました。

◇第2次改正(平成4年)
  医療機関の機能分化を進めるため、特定機能病院(高度の医療に対応する大学病院など)と療養
 型病床群(主として長期にわたり療養を必要とする患者を収容する病床)を制度化しました。

◇第3次改正(平成10年)
  総合病院制度を廃止して地域医療支援病院(診療所や中小病院からの紹介患者を一定比率以上
 受け入れ、これらの医療機関と連携・支援する病院)を新設しました。

◇第4次改正(平成12年)
 一般病床から療養病床を独立させ、一般病床を結核・精神・感染症・療養病床以外の病床と規定しま
 した。

◇第5次改正(平成18年)
  医療法全般に亘って大幅に手が加えられ、患者の選択に資する医療機関情報提供の推進、広告
 規制緩和、医療安全対策の強化、患者相談窓口設置の努力義務、医療計画の見直し、医療機能の
 分化・連携、行政処分を受けた医師等への再教育、医療法人制度の改革などが定められました。

◇第6次改正(平成26年)
 病床機能報告制度の創設と、地域医療ビジョンの策定という2つの柱により、医療機能、特に病床
 機能の分化と連携を進めていくことを狙いとして改正されました。また、この改正により、医療事故
 調査制度が医療法に盛り込まれ、法律に基づく医療事故調査制度がスタートしました。

◇第7次改正(平成27年)
 医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携を推進することを目的として、地域医療連携推進法人
 の認定制度が創設されました。また、医療法人制度の改革として、経営の透明性確保及びガバナンス
 の強化に関して医療法人の会計基準や役員と特殊の関係がある事業者との取引の状況に関する報
 告書の作成、理事の忠実義務、任務懈怠時の損害賠償責任等について踏み込んだ改正が行われまし
 た。

◇第8次改正(平成29年)
 特定機能病院におけるガバナンスの強化、検体検査の精度確保、医療機関のウェブサイト広告規制等
 について法改正が行われました。特定機能病院が医療の高度の安全を確保する必要があることを明記
 するとともに、
  @病院の管理運営の重要事項を合議体の決議に基づき行うこと
  A開設者による管理者権限の明確化及び監査委員会の設置
  B管理者の選任方法の透明化
 などの措置を講ずることを義務付けました。

   また、ゲノム医療の実用化に向けた遺伝子関連検査の精度確保等に取り組むため、医療機関が検体
 検査業務を委託する者の精度管理の基準の明確化や、検体検査の分類を柔軟に見直すため検査の分類
 を省令で定めることを規定しました。

さらに、これまで「広告」に該当しなかったウェブサイトが「広告」に当たることを明文で定め、
 虚偽広告、比較広告、誇大広告等を禁止しました。

  
  

受診に際して患者の知る権利と心得

           …診療情報提供指針等について…

 当会の面談相談に来られる相談者は、いろいろな診療科に共通して「医師からの説明が十分でない」と
 感じています。


−診療を受けるにあたって−

  医師からきちんと説明を受けましょう
 患者及び家族は遠慮しないで治療方法や疑問点を医師に聞きましょう。その際、自分が理解できる
ように説明を求めましょう。もし、納得できないことがあれば再度確認のために聞くことも大切です。
主治医の病状認識と患者・家族の認識に違いが出ることがあります。難しい医学用語もあり、医療者側と
患者側の共通認識を持つためには、患者側は疑問に思ったことは小さくても
遠慮しないで聞いていく
ことが大切です。
患者は医師から説明を受ける際は、病状・経過・合併症等、よく理解したうえで、説明を
受けることが大切です。病院側から説明を受ける時は出来れば複数で聞くこと、冷静に聞くためにもあら
かじめ知りたいポイントを事前に考えておきましょう。難解な言葉もありますので漠然とではなくメモを
とることもお勧めします。

 患者や家族と病院や医師は、病気を治すために協同で作業をするパートナーと考えて接することが、
良い結果を得る最良の方法だと考えます。

常日頃より医療者と積極的にコミュニケーションを
 治療にあたっては患者と医師とのコミュニケーションが何よりも大切です。常日頃、医療者と積極的に
コミュニケーションを取っておくことが、緊急時でも家族の思いを理解して
きちんと対応してもらえることに
繋がっていくことと考えます。

 最近ではインフォームド・コンセントが広く知られるようになりました。受診に際して「患者の知る権利」
 について
「診療情報提供指針」でご説明します。

<診療情報の提供指針とは>

 日本では昔は「知らしむべからず、依らしむべし」というような考え方が、医療分野で当たり前のようにまかり通っていましたが、外国では1973年に米国病院協会が「患者は自分の診断・治療・予後について完全な新しい情報を、自分に十分理解できる言葉で伝えられる権利がある」ということなどを明記した「患者の権利章典」を作り、1981年には世界医師会が「患者の権利に関するリスボン宣言」で同様なことを謳っています。1994年にはWHOヨーロッパ会議で「ヨーロッパにおける患者の権利の促進に関する宣言」が採択され、これが患者の権利についての世界標準となりました。
 こうした情勢の中で日本でも「患者の権利法をつくる会」などが活動を始め、「患者の権利オンブズマン」も積極的に意見を出して、厚生労働省はようやく2003年に「診療情報の提供等に関する指針(http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/
g150916-b.pdf)を全医療従事者・管理者が守るべきものとして出しました。その内容を抜粋すれば
・・・

 【診療中の診療情報の提供】

○医療従事者は、原則として、診療中の患者に対して、次に掲げる事項等について丁寧に説明しなければ
 ならない。

 ・現在の症状及び診断病名
  ・予後
  ・処置及び治療の方針
  ・処方する薬剤について、薬剤名、服用方法、効能及び特に注意する副作用
  ・代替的治療法がある場合には、その内容及び利害得失(患者が負担すべき費用が大きく異なる場合
  には、それぞれの場合の費用を含む。)

 ・手術や侵襲的な検査を行う場合には、その概要(執刀者及び助手の氏名を含む。)
 ・危険性、実施しない場合の危険性及び合併症の有無
 ・治療目的以外に、臨床試験や研究など他の目的も有する場合には、その旨及び目的の内容

○患者が未成年者等で判断能力がない場合には、診療中の診療情報の提供は親権者等に対してなされ
 なければならない。

医療安全・患者の心得7か条>

(1)わからないこと、不審なことはすべてよく訊きましょう
  初めて病院を訪れたときなどはわからないことだらけです。医師の説明も専門用語で話されては
  理解できません。そんなときは遠慮しないで納得できるまでよく訊きましょう。

(2)自分の不安・悩み・希望と意思をはっきり伝えましょう
  患者が症状や希望をはっきり言わなければ医師は的確な診療ができません。また患者は自分の体
  ですから自己決定権があり、診療方針に同意する、しないを明確にすべきです。

(3)容態の変化は黙っていないで早く知らせましょう
  医療者は常に患者についているわけではないので、具合が悪いときはすぐに知らせましょう。

(4)医療者には自分から名前を名乗りましょう
  患者の取り違えを防ぐにはこれも有効な方法です。

(5)お薬・注射はできればその都度自分でも確かめましょう
  医療事故の多くは薬・注射の間違いなので、患者も確認することが大切です。    

(6)体や意識が弱った状態でベッドから離れるときは転ばないよう気をつけ、僅かな不安でも
必ず看護師等を呼びましょう

転倒・転落の事故も多いのです。特にお年寄りの場合は絶対に気をつけましょう。   

(7)意識がなくなったときの治療についてよく考えて、要望を分かるようにしておきましょう
  治療は本人の意思を最大限尊重して行われます。本人が意思表示できない状態になったときは、
  家族も本人の意思を正しく代弁できるとは限らないのですから。



   
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