苦 情 は 宝 (第1集)

 医師不足、勤務医の労働強化などが社会問題となっている今日、「医療荒廃」を防ぐにも、苦情を宝に医療者と患者の信頼関係の構築が大事となります。相談事例の中から得られた医療者にも役立つ情報をお知らせします。


(1)手術後の外観について
 特に形成外科などの場合、どのようにまですることができるのか、できないのか、手術前に患者によく説明することが大事です。手術後の外観について本人がはっきりイメージできるように。そして説明は、専門用語でなく普通の人にわかるように。

(2)カルテ開示を断る場合
 カルテなどの診療情報を要求すれば当然コピーを貰えると思っている患者に、それを断る事情がある場合には、患者が納得するような説明がないと患者は不信を抱くことになります。

(3)死因解明のための解剖について
 家族が急死して、病院から解剖を勧められたのにもかかわらず、それを断って後で死因がわからないで困るご遺族もいます。死因が不明の場合には、家族への心理面のサポートに十分留意しつつ(これが大切ですが)解剖を勧めたり、最近はCTで行う死亡時画像病理診断(Ai)も始められているので、小児や頭部の解剖を避けたいご遺族にはこうしたこともお勧めしてはどうでしょうか。

4)診察室・施療室でのプライバシー配慮
 診察室や鍼灸を受けている部屋のプライバシーへの配慮が大切です。カーテンのみならず、部屋の中の会話等、周囲の人々に漏れないように。これは女性からの苦情が圧倒的に多いので、同時に、個室状態でのセクハラ等への不安が生じないような環境・雰囲気づくりにも配慮しましょう。

(5)がん告知の問題について
 がんなどの病名告知に際して、告知が当然として「がんです」と患者の心情を考慮せずぶっきらぼうに告げるだけなのも問題です。その時に病名を知りたいかどうかを聞くのではなく、予め本人がどんな意向なのかの情報を得ておくのがよいでしょう。

(6)患者、家族への心ない言葉
 患者、家族への思わぬ発言、配慮のない言葉などは、喋った本人は気がつかないかも知れませんが、患者、家族は深く傷つけられます。
 「もう年なんだから子宮なんて要らないでしょ」、末期で状態の急変した患者に対し、家族等の前で「あっ、こりゃもうだめだ」など。

(7)説明文書を渡すだけでは分からない
 人は千差万別で、同じ説明文書を手渡されても患者の理解は同じとは限りません。その人の年齢、性格、理解力などに見合った説明が信頼を築きます。

(8)家族への説明が必要なときも
 患者本人に判断力が不確かな場合、検査や治療の内容、危険性などについて家族への説明も。

(9)生活習慣病の患者には
 生活習慣病患者には、医療者の生活指導の熱意と工夫が患者の行動変容を促します。難しいことですが。

(10)医薬品医療機器総合機構の説明も
 薬の副作用に疑問を持つ患者には、「医薬品医療機器総合機構」の説明・活用も必要なことがあります。医学部の教育でもこの機構の役割をキチンと教えるべき。

(11)検査が必要でない理由を
 患者が希望する検査をしてくれないという苦情に対しては、必要な検査を行いつつ、必要でないものは必要でないと言うだけでなく、その理由を分かりやすく説明してあげてください。

(12)クリティカルパスのヴァリアンス
 クリティカルパス(検査、手術、投薬、処置、看護、リハビリ、退院等の内容・日程表)が示されて、その通りに治療が進むと期待していたのに、途中で勝手に変更されたという苦情に対しては、やはりその変更時点で患者の不安を解消する何らかの説明があるとよいでしょう。