患者のためのカルテの見方
● 診療記録の構成
 診療記録のコピーを全部取り寄せることができました。大量で専門用語もいっぱいで、どのように読んで良いのか分かりません。
 そこで、まず診療記録の構成を把握しましょう。構成を以下の表に記載しました。医療機関によって呼び方はいろいろです。また、患者によっては、ない記録もあります。
 入院した事案では、一般に外来診療録、入院診療録が作成されます。緊急入院になった場合もまずは外来で受診するので外来診療録が作成されます。
 入院の方が濃密な処置を受ける分、記録の種類も量も多いです。以下、入院診療録を参考に説明をします。

 【診療記録の構成】
 1 外来診療録
  @ 通院中の傷病名の一覧
  A 紹介状(診療情報提供書)・依頼書
  B カルテ
  C 各種検査報告書
 2 入院診療録
  @ 入院中の傷病名の一覧
  A 退院時サマリー
  B 紹介状(診療情報提供書)・依頼書
  C 入院病歴チェックシート(既往歴・家族歴など)
  D 入院時所見チェックシート
  E 入院診療計画書
  F カルテ
  G 患者・家族への説明書の控え
  H 同意書
  I 手術記録・麻酔記録
  J 医師指示表
  K 各種検査報告書
  L 看護計画書
  M 看護記録(温度板・記述式)
  N 手術看護記録
  
● 各記録の特徴
 入院診療録の表紙に,@ 入院中の傷病名と診断された日が一覧表の形で記載されるのが通常です。これを見れば、医療機関がいつごろどのような病気と診断して治療を進めたかが分かります。ただし、保険請求の関係で記載した場合もありますので(この詳しい説明は別稿に委ねます。)、必ずしも正確な病名ではありません。その点は注意して下さい。
 A 退院時サマリーは、退院時に診療経過のサマリー(要約)を記載したものです。比較的平易な文章で端的にまとまっています。ですから、医療機関が、患者のどのような症状から診断・治療を行ってきたのか大づかみに把握できます。
 B 紹介状(診療情報提供書)・依頼書は、他の医療機関、同じ病院でも他科が作成するもので、そこから紹介・依頼されて受診した場合などに綴られます。
 診療情報提供書には、前の医療機関での診断・治療内容の情報や何を考えて紹介したかという情報が比較的平易に記載されています。
 C 入院病歴チェックシート(既往歴・家族歴など)は、患者からの聞き取りなどを基に、既往歴・家族歴、日常の一般状態などを記録したものです。
 D 入院時所見チェックシートは、入院時の身体所見をとって記録するものです。診療にとっては重要な記録です。ただし、入院の時点でトラブルになっていることは少ないので、患者・家族にとっての重要度は相対的に低いでしょう。
 E 入院診療計画書は、どのような病気であると診断して(または疑って)、入院中、どのような検査・治療を行っていくか、計画を記載するものです。医療機関がどのような検査・治療をしようとしていたのか大づかみで把握することはできます。
 F カルテは、患者の症状、診断・処置内容を記録したものです。診療経過を把握する上で重要な情報が書かれていることはいうまでもありません。
 しかし、専門用語・略語が使われていて、理解は難しいです。
 専門用語・略語が使われている部分を本気で読み解こうと思うと、医学辞典や略語集を片手に調べることも必要になります。インターネットで専門用語などの情報を提供しているサイトもあるので、それを参考にするという方法もあります。
 また、カルテの中には患者・家族への説明内容を記載しているところがあります。そういう部分は読みやすいので、ピックアップして自分たちが受けた説明に合致しているか見るとよいでしょう。
 G 患者・家族への説明書の控えとは、Fカルテ中の記載とは別に、患者・家族に説明しながら複写式の用紙などに説明事項を記載した記録の控えのことです。手術について事前に説明する場合や重い合併症などが起こりその説明をする場合などに、この方法を使う医療機関があります。患者・家族にも説明事項を記載した用紙は渡されますが、もともと説明用に書いたものなので内容は整理されていて平易です。また、その情報は医療機関がどのように考え患者・家族に何を説明したかを示すものなので、とても重要です。
 H 同意書は、手術などをするときに、患者が同意の署名をする書面です。多くの情報が含まれるわけではありませんが、手術の名前・方法が簡単に記載されていることがあります。
 I 手術記録は、手術後に手術の内容を記録するものです。麻酔記録は、手術で麻酔が行われたとき、麻酔中の患者の状態などを記録するものです。手術に何か問題があったのではないかと疑われる事案では、是非とも読み解きたい記録です。しかし、これらはとても専門的な記録です。そこで、I手術看護記録を見るといいでしょう。これは、手術にあたった看護師が記録するものです。医師の作成するI手術記録や麻酔記録に比べると情報量は少ないですが、重要な点が分かりやすく記録されています。
 J 医師指示表は、医薬品などをいつ投与するか医師が看護師に指示するための記録です。これを見れば、どのような指示をされ、本当に投与されたのかを知ることができます。ただし、理解するのはしんどい記録です。
 K 各種検査報告書は、各種検査の報告書です。患者により様々ですが、血液検査、生化学検査、血液凝固能検査などは大方の患者で行われていると思われます。その他に、血液ガス分析、X線・CTなどの画像検査、超音波検査、細菌培養検査、手術が行われた場合の病理組織検査の報告などがあります。検査の結果を知りたいときは役立ちます。
 L 看護計画書は、入院などにあたって看護師が看護の計画を立てるものです。平易な文章でいて、比較的詳しい記載がされています。要所要所で作成されるので、参考になるでしょう。
 M 看護記録(温度板・記述式)は、看護師作成の看護の記録です。温度板にはバイタルサイン(体温・血圧・脈拍)がグラフで記載されています。記述式の看護記録には、どのような訴え、症状があり、処置が行われたかが平易な言葉で書かれています。診療経過を知るには、とても有益な情報です。
 
● 診療記録を見るコツ
 患者・家族が診療記録を見るのは、医療機関が患者のどのような訴え・症状を捉え、どのような処置を行ったか把握するためです。そのためには、その情報が記載されている記録を見ることが必要です。また、専門的だと理解が難しいので平易な記載が望まれます。
 そうすると、まずは退院時サマリーAを見て経過を大づかみし、さらに細かく診療経過や手術経過を把握するには、記述式の看護記録Mや 手術看護記録Nを見ることになります。また、前の医療機関などからどのような情報を引き継いで医療機関がどのような計画を立てたかを調べるためには、紹介状(診療情報提供書)・依頼書B、入院診療計画書E、看護計画書Lを見ると良いと考えます。重要な場面で、医師がどのように判断して処置を行い、それをどのように患者・家族に説明したかを把握するには、カルテFの中の説明内容の記録や、患者・家族への説明書の控えGが有益です。
 その他に情報量は決して多くないもののあまり難しくないので一通りチェックするという意味では、入院中の傷病名の一覧@、入院病歴チェックシート(既往歴・家族歴など)C、入院時所見チェックシートD、同意書Hも見ておくと良いでしょう。
 それ以外は、専門的であったり、疑問に感じる部分を離れて細かい記録があったりするので、必要に応じて見れば良いでしょう。
 診療記録の記載をどう理解すれば良いか悩んだときは、患者の権利オンブズマン東京の面談相談を申し込まれて相談に来られても結構です。