受診に際して患者の知る権利
           …診療情報提供指針等について…

 当会の面談相談に来られる相談者は、いろいろな診療科に共通して「医師からの説明が十分でない」と感じている苦情が多数を占めています。その場合、病院との話し合いの中で医師は「説明をした」と言い、患者は「聞いていない」と言うこともありますが、患者が気が動転して頭が真っ白になっているような場合には、往々にしてそういうことも起こるでしょう。
 従って医師は患者の状態をよく見て患者が納得したかどうかを確かめることが必要でしょうし、患者は冷静な時に改めて聞くとか、少しでも不安があれば再度聞くことが大事です。
 最近では社会的にインフォームド・コンセントが知られるようになり、厚生労働省も各医療機関、医療従事者もこれを重視するようになってきましたが、患者の側も診療の際にどんなことを知る権利があるのか、医療者に対してはどんな教育・指導が行われているのかを知ることが、信頼関係を築く上でも必要です。
 日本では昔は「知らしむべからず、依らしむべし」というような考え方が、医療分野で当たり前のようにまかり通っていましたが、外国では1973年に米国病院協会が「患者は自分の診断・治療・予後について完全な新しい情報を、自分に十分理解できる言葉で伝えられる権利がある」ということなどを明記した「患者の権利章典」を作り、1981年には世界医師会が「患者の権利に関するリスボン宣言」で同様なことを謳っています。1994年にはWHOヨーロッパ会議で「ヨーロッパにおける患者の権利の促進に関する宣言」が採択され、これが患者の権利についての世界標準となりました。
 こうした情勢の中で日本でも「患者の権利法をつくる会」などが活動を始め、「患者の権利オンブズマン」も積極的に意見を出して、厚生労働省はようやく2003年に「診療情報の提供等に関する指針(http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/150916-b.pdfを全医療従事者・管理者が守るべきものとして出しました。その内容を抜粋すれば

 【診療中の診療情報の提供】

○医療従事者は、原則として、診療中の患者に対して、次に掲げる事項等について丁寧に説明しなければならない。
・現在の症状及び診断病名
・予後
・処置及び治療の方針
・処方する薬剤について、薬剤名、服用方法、効能及び特に注意する副作用
・代替的治療法がある場合には、その内容及び利害得失(患者が負担すべき費用が大きく異なる場合には、それぞれの場合の費用を含む。)
・手術や侵襲的な検査を行う場合には、その概要(執刀者及び助手の氏名を含む。)
・危険性、実施しない場合の危険性及び合併症の有無

・治療目的以外に、臨床試験や研究など他の目的も有する場合には、その旨及び目的の内容
○医療従事者は、患者が「知らないでいたい希望」を表明した場合には、これを尊重しなければならない。
○患者が未成年者等で判断能力がない場合には、診療中の診療情報の提供は親権者等に対してなされなければならない。


 以上の通りですから、患者はこれに基づいて必要なことを納得するまで聞く権利があり医療従事者はそれに丁寧に応える義務があるので、患者はそのことを十分頭に入れた上で診療を受けるようにしましょう。患者も漠然とではなくメモを用意するなど、なぜそんな質問をするのか、不安に思っているのは何か、など焦点をはっきりさせて聞くと、医師も説明しやすいでしょう。患者が確認のためを含めて上手な質問をすることは、医療者にとっても勉強になることです。診療情報提供などでトラブルがあれば各種の相談窓口も増えてきたので、そこを利用することもできます。